検索エンジンマーケティングとビジネスチャンス

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中国の百度(バイドゥ)や韓国の1noon(チョッヌン)などの検索エンジンの日本進出に伴い、ロボットやクローラ施策が益々重要になりそうです。

実際2007年に入ってから、ロボットやクローラの解析を行うと、その種類の多さにびっくりすると同時に、今後も増え続けると思うと、頭が白くなってきます。
筆者が分析をしている限りでは、ブログサイトへの来訪ロボット、企業サイトへの来訪ロボット、ECサイトへの来訪ロボットとそれぞれ傾向パターンがあるように見えます。
それぞれの特徴をどのようにビジネスに活かすか。
この点がテーマの1つであるのですが、筆者は異常な数、パターンと増加スピードに手をかけるタイミングを失っていることが反省点です。

世界で最初のロボット型検索エンジンは、1994年1月に有料サービスとして開始されたInfoseekだと言われています。
有料であったことと、Webというインフラが一般定着していなかったこと、Webに上がっている情報が少なかったことなどの市場性から顧客はなかなか集まらず、同年夏には無料サービスに移行しています。
同じ年の4月に、後のYahoo!の創設者となるジェリー・ヤンとデビット・ファイロがディレクトリの原型となるリンク集を公開しました。しかし検索エンジンの代名詞といった印象を市場に認知させていたのは、既にDECの研究所にて開発されていたAltaVistaでした。
1995年にサービスを開始したExciteもかなりの人気を集めていました。MagellanやWebcrawlerといった検索エンジンもその頃出現したと言われています。
しかし、こうした企業の多くは現在ほとんど姿を消しています。
MagellanとWebcrawlerはExciteに買収され、そのExciteも2002年に倒産。日本法人は伊藤忠商事の子会社として生き残りポータルサイトへと移り変わりました。

同時期にAltaVistaはYahoo!がInktomiに乗り換えるのと同時に力を失い、DECがコンパックと合弁すると共に切り離され、その後Overtureに買収されることになりました。Inktomiもその後Yahoo!がGoogleに乗り換えることで破綻の危機に瀕することになるのですが、既知の通りYahoo!とGoogleが決裂するに及んだことで、Yahoo!に買収される結末となりました。

世界初の検索エンジンだったInfoseekは、親会社のディズニーによって閉鎖され、日本法人のみがInfoseekの名称を引き継ぎ存続することとなりました。しかし、日本法人も2000年に楽天に買収されることとなり、その後ライコスと統合することで現在は楽天のポータル戦略の一環として生き延びています。しかし独自の検索エンジン開発はもはや行われていません。

2000年前後の検索エンジンには大きくわけて2つの技術的な競争がありました。
1つは他社よりもインデックスを巨大化させ、Web世界を以下に覆いつくすかといったデータベース構築競争になります。
2つめはユーザからの検索クエリに対して以下に適切な回答を返すか、というアルゴリズムの競争でした。
この2つの競争において圧倒的な技術的勝利を収めたのが、現在の3強のうちの1つ"Google"です。

データベース競争においてGoogleは、分散モデルを導入することによりデータベースのスケーラビリティを徹底的に推し進めました。
1台のスーパーコンピュータで処理するよりも、大量のマシンを使用する分散システムを構築しました。
数百万台とも言われるサーバから、数万のHTML収集クローラが送り出され、同時並列にWebページの収集を行い、数万~数十万台といわれるマシンに処理させています。
現在はブレードサーバ技術の普及により、非常に効率的にこれらの処理を行っているとの事です。

また、アルゴリズムにおいての競争でも、Googleはページランクテクノロジと呼ばれる技術を導入することで、検索結果に圧倒的に公平性と正確さを与えることに成功しました。

searchengine.gif

図:検索エンジン淘汰の歴史

Googleはページランクテクノロジのアルゴリズムとその性能を認められ、2000年5月にYahoo!の公式検索エンジンとして採用されることとなります。圧倒的なリーチ率を誇る巨大ポータル、Yahoo!の力によってGoogleは一般社会にも広く認知されることとなり、Googleブランドというイメージを定着させていくこととなります。
ところがGoogleが力を付けていくにしたがって、両者の関係は次第にギクシャクしたものに変わっていきます。ポータルとしてのコンセプトを持ったYahoo!よりも、検索エンジンのGoogleの方に市場の目が向いてしまったためです。
Yahoo!は検索エンジンがGoogleであることによるイメージを脱却するために、検索エンジンの自社開発という道を選択することとなります。
その一環として、2002年12月にInktomiを買収します。さらにYahoo!はキーワード広告の分野で激しい争いを繰り広げていたGoogleとOvertureの戦いに対して、2003年7月、Overtureを買収するという動きに出ます。話はそれますが、Overtureの前身であるGoto.comは1999年に設立され、世界で始めてWebの広告業界に検索結果の上位ランキングを広告料金という形で販売するというビジネスモデルを展開しています。Googleもご存知の通り、Adwords広告というキーワード広告モデルを投入し、さらにAdsenceというコンテンツターゲット広告を定着させると言った、検索エンジンのビジネススケールの拡大に寄与することになりました。

話しを戻し、Yahoo!はOvertureを買収した結果、キーワード広告市場はYahoo!とGoogle2社の覇権争いの構図を生み出す事になりました。実はOvertureはYahoo!に買収される直前ノルウェーの優秀な検索エンジンであったFAST(Fast Search & Transfer)社の検索部門と、老舗のAltaVistaを買収していました。つまり、Yahoo!はOverture1社の買収で、Inktomiを含めて一挙に検索エンジン企業4社を有する業界のメイン・プレイヤーとなることが出来たのです。そしてこれら買収企業4社のテクノロジを活用し、2004年2月にポータルの検索エンジンをGoogleから自社開発のYahoo! Search Technology(YST)へと切り替えることに至りました。

GoogleとYahoo!の激しい覇権争いに揺さぶられたのがマイクロソフトでした。
同社のポータルサイト"MSN"は検索エンジンとしてInktomiとOverture2社と契約を行っていました。上記の通りInktomi、Overture2社がYahoo!の傘下に入ったことで、契約続行は暗雲を招くことになり、機を見るに敏なマイクロソフトは検索エンジンをデスクトップ、Webブラウジングに次ぐ第3の波と捉え、次世代のメインストリームに乗り遅れないためにも、検索エンジンの自社開発の道を選択することになります。
これにより、2005年にInktomiから自社製のMSN Searchに乗り換えるに至ります。

ついに"Yahoo!""Google""MSN"3強の激しい戦いの火蓋が切られることとなるのです。

searchengineb.gif

図:検索エンジンの進化

Overtureが開発し、GoogleがAdwordsで追随したキーワード広告の隆盛は、検索エンジンというテクノロジの世界にビジネスを持ち込みました。Googleはそれまでのポータルサイトに検索エンジンを提供するOEMビジネスのみでなく、キーワード広告、コンテンツターゲット広告を収益の中核にすえるようになっていきます。
検索エンジン各社は、収益を増やすために単純に広告を増やすのみでは広告はスパムとなってユーザから避けられてしまう事を学び、市場のニーズは、キーワード広告やコンテンツ広告を表示する"場所・スペース"を増やすことであり、その結果としてターゲットを拡大させ"場所・スペース"の面積を拡大していく戦略を取ることとなります。
多くの検索フィールドを存在させ、薄く広く広告を展開することで、ユーザにより受け入れやすい環境を構築することがビジネスの課題となっていきます。

従来のWebのテキストのみを対象としていた検索エンジンは、動画や商品カタログ、書籍の全文テキスト、電話帳などの地域情報、テレビ番組など、学術的な側面も含め、"検索"というニーズに対してターゲットを広げていくこととなります。
このような"検索"の世界に画期的な変化をもたらすこととなったのが"デスクトップ検索"です。

"Google Desktop Search"は、2004年10月に、メールやプレーンテキスト、MS-Officeの文書、AOLのチャットのログ、Webブラウザの履歴などローカルPCの情報を検索し、Webブラウザの画面上に検索結果を表示できるツールとしてベータ版がリリースされました。Googleはこのアプリケーションの開発に際して、NEC Research Instituteからヘッドハンティングしたスティーブ・ローレンスを投入し、約1年という短期間にてリリースを成功させています。

このGoogleの新しい検索に激しい焦燥感を抱いたのがマイクロソフトでした。デスクトップが自社の牙城と自負する同社にとって、デスクトップ分野にGoogleの進出を許すと言うのはとうてい容認できることではありません。そこでマイクロソフトはGoogleに対抗し、デスクトップ検索を開発しベータ版を2004年12月のリリースにこぎつけます。同分野で出遅れていたYahoo!も2005年1月に"Yahoo! Desktop Search"のベータ版をリリースします。

検索エンジンの対象を拡大させていく動きの一方で注目されるべき分野があります。
それは商品検索です。Googleは2002年のクリスマス商戦という極めて早い時期にFroogleと呼ばれる商品検索エンジンのベータ版をリリースします。Froogleで検索される商品は、世界中のオンラインショッピングサイトからクローラを利用し自動的に収集した商品データになります。特定のサイトと連携して垂直統合をするのではなく、オープンなシステムをフルフィル業界に対して提供するというモデルをGoogleは選択したのです。

この分野においてもYahoo!はGoogleに追随してきます。2003年9月に商品の価格比較を行うことができる"Yahoo! Product Search"のベータ版のリリースに至ります。マイクロソフトも2005年3月とかなり出遅れてショッピング検索の"MSN Shopping"のベータ版をリリースしました。
しかし、こうした検索エンジン業界の3強の動きに対して、さらに驚くべきビジネスモデルを打ち出したのが、オンライン書店"Amazon.com"でした。

Amazon.comは2003年10月、A9という子会社を設立し、独自の商品検索テクノロジのリリースを行うと発表し、設立直後の10月下旬にAmazon.comにて販売されている書籍のフルテキスト検索をリリースし、業界に震撼を与えました。

A9のフルテキスト検索は"Search Inside Book"という名称にて、スタート時には出版社は190社の12万冊、計3300ページという膨大な量が検索対象になりました。これを全てスキャンし、テキスト化させたのです。
さらにA9は2004年9月には本格的なオーガニック検索エンジンをリリースします。検索結果をWebやイメージ、書籍、映画などに分類し、それぞれを伸縮可能なコラム形式で表示するインターフェースを持たせています。さらにユーザのCookieからWebブラウジング履歴を記録し、その履歴の中から検索できると言ったパーソナライズ機能を持つなど、秀逸なトライアルが満載の検索エンジンという新たな世界を切り開きます。
元々Amazon.comのマーケティングテクノロジには定評がありました。例えば特定の本をサイトで表示させると"この本を買った人はこんな本も買っています"とお勧めが表示されるBook Matcherというフィルタリング技術は同社の特許となっていますが、One to Oneマーケティング、レコメンデーションシステムの具現化として広く認知されることとなりました。

検索エンジン業界のビジネス拡大、拡充により、検索エンジンのみならずWeb業界全体がビジネスモデルの具現化に躍起な中Ask Jeevesは、同社が誇るTeomaテクノロジと呼ばれる純粋な情報検索という、極めてオーガニックな検索エンジンの志向"インターネットの世界は同じテーマ、話題を共有するWebページの集合体によって構成されている"という理念を持ち、Teomaの検索結果は単にURLの一覧のみでなく、求める検索結果のWebページがどのような集合体に属し、その集合体がどのようなエキスパート、オーソリティによって主導されているのかを表示するという、Googleのページランクテクノロジを推し進めたコンセプトを持つビジネスとして展開していく事になります。
このような時代の流れにおいて、検索エンジンをドラスティックに変容させる大きな動きとして。インターネットにおける情報のシンディケーション(配信システム)との融合が起こります。具体的には、旧来のプッシュ型の情報配信システムと、プル型のメディアであった検索エンジンの双方の接近、CRMからCGMへの変化の源泉とも言える、ブログ、RSS、Google Newsなどのパーソナライゼーション、Amazon.comのレコメンデーションといった市場に対する、ユーザ市場の変化、ユーザの変化によるマーケティング市場の変化から、CGMマーケティングの要素と"検索"が融合し始めています。

例えばブログのリアルタイム検索エンジンとして徐々に認知度を上げている"Technorati"も、そのひとつとなります。ブログに書かれたエントリーをほぼリアルタイムで検索することが可能です。検索結果には"リンクを見る"というボタンもあり、表示された検索結果がどこからリンクが貼られているのかを調べる事も可能であり、それぞれのサイトとのつながり、信頼性を無限に追いかけることが出来る仕組みを持っています。また、URLを検索フォームに入力することで、該当URLがどこからリンクが貼られているのかを一覧表示することも可能としています。GoogleのWebマスターツールにおいても同様の機能があるように、CGMマーケティングにおける1つのポイントであるインターネットのコミュニティ性に注目し、コミュニティ性に特化した検索エンジンという性質も現れています。

Web全体を対象とした検索エンジンにおいては、Googleの1人勝ちのような状況が続いていますが、ブログなどのパーソナリティの色が濃い市場においては、様々な使用用途、シチュエーションに特化した検索エンジンが出現しています。今後の検索エンジンは、ユーザのパーソナライゼーション、ライフスタイルにおける"検索"という行動に紐付く行動傾向的な分野に可能性が秘められていると思います。実際検索した結果を更にマイニングするという行動については、GoogleのWebサービスなどによって注目されていますが、ライフスタイル、行動傾向の視点ではユーザビリティにおいてベストであるとは感じていません。新たなテクノロジやビジネスモデルの出現により、より細分化された"検索"傾向ごとに適応し有効なエンジンが登場する可能性、必要性はまだまだ未知数であると感じます。

アクセス解析により、ユーザの市場性を幅広く捉えることにより、コンテンツの目標やコンセプトに対してビジタが何を求めているのか、ユーザの興味はどのような形でどこを向いているのかといった情報に対して、解析、分析、志向、施策をもって効率的なワークメジャメントをもってスパイラルアップしていくことが、新たなビジネスチャンスを見出すことのできる重要なプロセスだと、改めて反省しているだけではなく、行動を起こさなくてはと自分に言い聞かせています。

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