One to Oneマーケティングに新たな"ひかり"を

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CRM(Customer Relationship Management)がマーケティングのキーワードだった頃、既存ユーザとの良好な関係を維持することによって、収益性を高めることが重要な課題であり、成果指標として利用されたのがLTV(顧客生涯価値)でした。

LTVとは、1人1人のユーザが製品や企業に対してコミュニケーションを行い支払う合計金額から、その顧客を獲得・維持するための費用合計を差し引いた「累積利益額」になります。
LTVでのマーケティングは、CRMからCGMに変化したコンテンツ市場とユーザ市場の関係性にて"ひかり"を失ったわけではなく、CGMマーケティングにおいても適用できる重要な成果指標であると思います。

"マーケティング"についてにてレポートしたように、マーケティングの視点はまずユーザ層を中心にコミュニケーションを行おうとしたとき、マーケティング・アプローチとして大きく分けて2つの手法があると言えます。
1つはマス・マーケティングであり、もう1つはOne to Oneマーケティングです。

従来のマス・マーケティング

従来のマス・マーケティングは、ユーザをマス(集合体、群れ)ととらえ、その属性や傾向などの共通項から絞り込み、「顧客ターゲットを設定する」というアプ ローチでした。
これに対し、One to Oneマーケティングは、ユーザを個としてとらえ、ユーザ起点の個別アプローチを行います。マス・マーケティングが新規ユーザを獲得することを主な狙いとするのに対 し、One to Oneマーケティングは既存ユーザとの双方向で継続的な関係維持を重視する形になります。
よって、One to Oneマーケティングの究極の目的は、ユーザのLTV(顧客生涯価値)を最大限に引き出すことが目的となるのです。

例えば、A君が数年ごとにAキャリアの携帯電話を5機種買い換えているとします。1機種当たりの平均購入価格が3万円だったとすると、A君がAキャリアの機種購入で支払った合計金額は15万円となります。一方A社がA君というユーザを獲得し、維持するに当たりかかったコスト、つまり買い換えて貰うために必要とした開発・製造費、宣伝費、営業費などの合計が10万円(1人当たり)だったとすると、A君のLTVは5万円(15万円 - 10万円)という試算になります。

マーケティングに限ったことでは無いと思いますが、企業活動をコントロールするに当たり、LTVの最大化は非常に重要です。
上記の例で言えば、A君が他キャリアにMNP(Mobile Number Portability)番号ポータビリティなどで乗り換えず、ずっとAキャリアの携帯に買い換えてもらうために必要なマーケティング活動(ユーザ維持活動)を実施することが重要だということです。
ユーザ維持のためのマーケティングに莫大な費用をかけて良いわけではありませんので、必要とされる予算を適切に算出し根拠を示すことが重要だということです。

LTV(顧客生涯価値)のコンセプトとは

LTV(顧客生涯価値)のコンセプトを提唱したのがマーケティングコンサルタントのドン・ペパーズとマーサ・ロジャースで、著書「The One to One Future」によって広く認知されることとなりました。彼らはOne to Oneマーケティングを「1回に1人の顧客というビジネスを構築するために情報技術を駆使し、異なる顧客に異なる対応が出来るように企業努力をすること」と説明しています。

LTV(顧客生涯価値)の算出方法

具体的な「LTV」の算出方法として、理屈上はユーザ1人1人個別に算出するように定義されていますが、実務レベルにおいてはユーザ全体をマスとして捉えます。Webでのショッピング、e-コマースにおいてはこの点、1人1人の購買金額と顧客費用を計算することが出来るので、非常に効果的な手法だといえます。
LTVにおいては、長期的なコンセプト・目的における指標と、短期的なコンセプト・目的における指標があります。
長期的コンセプトは、生涯顧客の創造になり、短期的コンセプトは、直近の顧客の想像になります。
直近の顧客とは、今月の売上をつくるためのキャンペーンなどの活動に当たります。
基本的なLTV(生涯顧客価値)の計算式は、

[年間取引額] × [収益率] × [取引継続年数]

になりますが、ロイヤリティの高い顧客を特定するために「購買頻度」や「1回当たりの取引金額」「ブランド指名率」などを考慮に入れたり、ユーザのライフサイクルが超長期であることを想定して現在価値に換算するといった操作をすることもあります。

下図は実際にLTVを算出したレポートとなります。

ltv.gif

各算出方法としては、
リピータ数 = 新規ユーザ数 × ユーザ維持率
収入 = ユーザ単価 × リピータ数
ユーザ維持費用 = リピータ数 × 1ユーザ当たりユーザ維持費用
単年度利益 = 収入 - ユーザ維持費用
初期投資額 = 初年度ユーザ維持投下費用
LTV(顧客生涯価値)合計 = 単年度利益の累計金額
1人当たりLTV = LTV合計 ÷ 初年度新規顧客数

Webビジネスを考慮しているので、総ユーザ数やアクティブユーザ数を含めて算出しています。
この表では新規立ち上げ1年目にユーザになった方は50万人になりました。ユーザ維持率は、初年度がもっとも低く20%、以降は、顧客維持率は向上し、5年目は前年の顧客の70%がリピートしていて35万人残っています。逆に、5年前と比べると、80万人が離れてしまったということです。

1年目に戻り、初年度の総売り上げは、ユーザ単価が1,000円ですから、2,000万円となります。ユーザ維持費用は合計で1,500万円掛かっています。したがって、初年単年度利益は500万円となります。
しかし、この年は、新規ユーザ50万人を獲得するための費用、1,000万円が「初期投資額」として別途掛かっていますから、これを引くと初年度のLTVは1人当たりで見るとわずか13円に過ぎません。

しかし、2年目以降は新規ユーザ数は減少していくものの、総ユーザ数は増加しているため、顧客単価は減少しています。また、1人当たり顧客維持費用も多少減ったため、毎年、相応の利益を上げています。

LTVについては、単年度利益の累積金額となります。
表の最下行「1ユーザ当たりLTV」は、LTVを50万人で割ったものになります。初年度の総ユーザ数40万人を分母として、2年目以降も全体の平均値を算出します(つまり、5年目まで総ユーザ40万人が維持できていると仮定して、1人当たりいくらのLTVになるのかを算出しているということになります)。

表を見ていただくと、5年目の「1ユーザ当たりLTV」は約55円です。つまり、このサイトでは自社ユーザは5年間で1人当たり55円の価値(利益)を生み出してくれているということになります。初年度の1ユーザ当たりのLTV(利益)が13円に過ぎなかったのと比較してみると、額は小さいもののLTV(顧客生涯価値)を5倍も出しているといえます。

LTV(顧客生涯価値)の重要性

LTV(顧客生涯価値)が注目される背景として、ユーザを新規に獲得するには、既存顧客維持の5倍のコストが必要だと言われているからだといえます。利益最大化を考えた場合、既存ユーザ(特に固定客・リピータ・得意先など)からの売上を重視するほうが効率的であり、1人1人(1社1社)の顧客シェアを追求すべきだという考え方から考案されたものになります。

Webマーケティングにおいては、ユニークユーザの測定が可能であるため、リアルのマーケティングにて顧客をマスとして捉える点と比較して優位性が高いといえます。Webビジネスでのマーケティングにおいては、Webアクセス解析データから個々の顧客1人1人でLTVを計測し指標とすることが出来るため、本来のOne to Oneマーケティングと言えるため、より高い価値を持つLTV(顧客生涯価値)を算出し、利益最大化を計ることが可能になるのです。

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