Webマーケティング 観点の変化
Webマーケティングに関わり、Webアクセス解析を行っていますが、ここ数年で大分考え方、視点を変えなければならない点が増えたと思うことがあります。
マーケティングとWebマーケティングは微妙に異なる点があり、わかりやすく言うと
"売る為の仕組みづくり"
といった売上に直結する商品に関しての分析という意識から、顧客の行動パターンや属性分析といったヒューマンウォッチングというか、精神分析、行動心理分析のような意識を持ち、様々な人間の行動パターンから分析することが重要になっていると強く感じます。
マーケティングの本質
元来マーケティングとは"売るための仕組み作り"のことを言うのですが、一般的にマーケティングというイメージは広告に繋がっていると思っている人が多いようです。
しかし、本来のマーケティングとは、製品・流通・価格・販促・広告といった、売るための仕組み全体の要素を効果的に組み合わせ、ブランディングイメージと売上高からの費用対効果測定のみでなく、どの部分をどのように効率化を行う事で、粗利益をどれだけ上げ、製品の単価をどのように下げ、社員や投資家を含めた顧客満足度を高めるかといった事が"マーケティング"ということなのです。
マーケティングは商品そのもの、車や家電、化粧品や食品といったモノを対象とした購買プロセスの分析ではなく、企業と商品を取り巻く利益向上のプロセスの分析だと言えます。
あまり大きな規模で話を進めてもまとまらなくなってしまいそうなので、顧客とのつながりにおける売上向上をポイントに進めたいと思います。
顧客との密接な関係から売上向上を図る
まずは、マーケッターと営業の作業分担を明確にしておかなければならないと思います。
どこからどこまでがマーケティング領域であり、どこからどこまでが営業の領域であるのかがわからず、それぞれが売上向上を目標にバラバラに動いてしまっては、売上向上はおろか企業と商品の価値が失われ、結果全てを失ってしまう例は少なくありません。
図:顧客の購買プロセスとマーケティング・営業の業務
マーケティング担当者は市場規模を調査し、ブランドコンセプトに最適な市場とチャネルを突き止め、市場・顧客のニーズと影響力を見極めるところからスタートします。
一般的に広告や販売促進は外部に協力を仰ぎますが、ブランドコンセプトを明確にしておくことは外部、内部に関わらず重要なポイントです。基本的にブランドコンセプトにダブルスタンダードはありえません。
営業活動や受注に繋ぐツールが揃えば、さらにCM、広告媒体、ダイレクトメール、テレマーケティング、カンファレンスなどを活用し潜在顧客を掘り起こします。
ここまでは俗にいわれる4Pの役割となります。認知拡大による市場への影響にてブランドがさらに拡大すると4P意外にセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングなども必要な要素となってきます。
Webマーケティングにおける4P+α(アルファ)
ジェローム・マッカーシーが提唱した、製品(Products)、価格(Price)、プロモーション(Promotion)、流通(Place)という4Pに対し、フィリップ・コトラーは、物的証拠(Physical evidence)、プロセス(Process)、人(People)を追加した7Pを提唱しています。筆者はどちらかというと7Pの方が、Web 2.0時代におけるCGMマーケティングにおいて受け入れやすいと思っています。
Pという頭文字への本質的な機能に対して、下記のような再定義が提唱された時期もありました。
製品(Products) = 構成(Configuration)
価格(Price) = 評価(Valuation)
流通(Place) = 円滑化(Facilitation)
プロモーション(Promotion) = 象徴化(Symbolization)
これらの提唱は全て売り手側の視点におけるマーケティング概念ですが、ロバート・ラウターボーンは売り手は4Pを設定する前に、まず買い手の視点での4Cの検討から入るべきだと主張し、買い手側の視点として、顧客価値(Customer value)、顧客コスト(Customer cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)を、下記のような形で各4Pに対応させました。
製品(Products) = 顧客価値(Customer value)
価格(Price) = 顧客コスト(Customer cost)
流通(Place) = 利便性(Convenience)
プロモーション(Promotion) = 象コミュニケーション(Communication)
ラウターボーンは、ターゲット市場の顧客を4Cの見方で理解すれば4Pの設定もはるかに容易になるとの主張から上記の構図を提唱しました。4P、7P、4Cのいずれにせよ、マーケティングがターゲット市場に対して「まず顧客ありき」の視点から、どのようなベネフィットをもたらす製品を開発し、どのような価格で売るのか、どのようなプロモーションを行うのかといった判断も、対象となる顧客や市場に対するブランドコンセプトの上に成り立ちます。
WEBマーケティング活動でも適切なマーケティングを行うプロセスは変わらず、「まず顧客ありき」の視点が必要なのです。
技術やスペック、豊富すぎる機能よりも、まずはターゲットとなるマーケット層がどの程度のモノを欲していて、どのようなポイントに技術やスペックを用いるべきか。豊富な機能をどれだけわかりやすくシンプルに、使いやすい商品にするのか、
このポイントを作り手やメーカーの思い込みで進めてしまい、出来上がってしまってからなぜ売れないのか、売り方を変えれば売れるという流れにはまってしまうケースが多いように思います。
出来上がってしまってからでも、顧客ありきの視点で分析を行いながら作られた製品は、売れなかった際にも、過程において、どの顧客ありきの視点に誤差、差異があったのかを見出しやすく、堅実かつ効果的な戦略的解決策が取りやすいのです。
それぞれ4Pが売り手としてのマーケティングコンセプトに基く提唱であることは、4Cの買い手の視点は既に4Pの中に含まれているといえます。顧客がいるから売り手がいるのであって、どちらかのみであれば、これらの概念は必要無くなってしまいます。
顧客の視点からしてみればPは大きな製品(Products)に集約され、購入の際に負のイメージ、情報を得ていたり、購入の際の些細な事柄、スムーズに購入できなかった、要望が伝わらなかったなどで、最終的なコンバージョンに至らないということは多々あります。
ハーバード・ビジネススクールのセオドア・レビット教授の「人は製品を買うのではない。製品がもたらすベネフィットに対する期待を買うのである」という言葉を、好意をもって曲解するなら、人に買いたいと思わせるものはすべて製品の一部だと言い換えられます。
Web2.0時代のCGMマーケティング
このように考えると、やはりマーケティングにおいては、差別化、ポジショニングが重要な課題となります。
Web 2.0時代のCGMマーケティングにおいては、より競合と差別化し、ユーザにコンバージョンに至らせたい思わせるようポジショニングを行い、実際にコンバージョンにつなげるために行なうものです。4つのPはそれぞれ、最終的な顧客の購買行動を誘引するものであり、結局重要なのは顧客のコンバージョン対象そのものなのです。
このように考えると、結局4つのPだとか、7つのPだとかといった議論をしてもあまり意味が無いとも言えます。Pをいくつに分類するかが重要なのではなく、最終的に効果を生み出すような大きなP(約束=ユーザの期待)を実現するのに、最適なマーケティングデータの組合せをMECE(Mutually Exclusive collectively Exhaustive)という相互に重なることなく、漏らさず集めることが、重要な課題となってきます。
この点で、必ず相互に重なることなく漏らすことなく情報を集めるに当たり、ロングテールが活かされてくるのですが、ユーザの頭の中にある競争力のあるブランド価値を生み出す活動としてのブランドマーケティングともリンクしてきます。
結局Webマーケティングが目的とすることは、あらゆるマーケティングデータの組合せによるシナジー効果を駆使しながら、ユーザの意識の中にブランド(企業名、製品名、ロゴなど)とブランドの約束(ユーザが期待する価値)を事業収益に繋げ結び付けていく活動となるのです。
この活動において、ブランドコンセプトと顧客、投資家、社員を含めた消費者市場を如何に結び付けるのかを、ユーザ層を中心に考えコミュニケーションを行うことが、Web 2.0時代のCGMマーケティングにおいて重要だと考えます。
Leave a comment