モバイルコマースサイト制作のポイント

「モバイル マーケティング ソリューション ガイドライン」の 「モバイルコマースサイト作成」が非常に良くまとまっている。

モバイル マーケティング ソリューション協議会(以下:MMSA)が先日公開した、
「モバイル マーケティング ソリューション ガイドライン」(以下:MMSG)の、第1章 オンアクセス編、"②モバイルコマースサイト作成"の項目が、非常に良くまとまっているので、紹介したいと思う。

なお、MMSGの最新版となるVer. 2.2は、2009/7/9時点で、MMSAのサイトからPDFダウンロードができない状況だが、問い合わせから配送をお願いすることができるとのことだ。

【出典・引用・関連】
モバイルマーケティングソリューション協議会(http://www.mmsa.jp/)

②モバイルコマースサイト作成

概況

2007年度の市場規模は7000億円を超え、モバイル端末を使っての購買行動は本格的な普及期に差し掛かっていると言っても差支えないでしょう。楽天を始め大手ショッピングモールにおいても、モバイルコマースの伸びは顕著です。今後もこの伸びは継続すると見込まれ、野村総研によれば、2013年度年モバイルEC市場は2兆5000億円規模と予測されています。常に肌身離さず持ち歩いているということや、ユーザからみるとプライベートな使い方を想起させる機器であるという特性を生かした購買手段としてモバイルコマースが大きく広がり始めています。 ここではモバイルコマースについて、
  1. 開始するに当たって必要な準備
  2. 制作するに当たっての必要事項
  3. 運用時における注意事項
を説明します。

モバイルコマース開始の準備

モバイルコマースを開始するに当たっては在庫管理・物流・決済について検討する必要があります。これらの準備に当たってはそれぞれのサービスを提供する業者とのやり取りが発生することになるため、契約締結までに一定の手続きおよび時間を要することになります

決済

決済手法にはクレジットカード、代金引換、銀行振込み、コンビニ決済、郵便振替、キャリア課金代行サービスの利用、電子マネーなどの手法が存在します。商品やターゲット顧客に応じた手法を選択することになります。 モバイルの場合は代金引換が決済手法としてはよく使われることが多いようです。コンビニ決済は、若年層の多いサイトの場合は利用頻度が高くなりますが、同時にキャンセルの割合も高くなる傾向が見受けられるので実際の運用時には注意が必要になります。 キャリア課金代行サービスについては、各キャリアにお問合せ下さい。また、最近ではキャリア課金代行サービスに対応した決済代行業者も登場し始めており、より手軽に利用できる環境が整いつつあります。暗証番号の入力だけで決済が完了する手軽さに加え、代金回収をキャリアが代行するため回収漏れが起こりにくいなどのメリットがある一方、月額に利用できる上限が定められているため高額商品の購買には向かないという特徴があります。 電子マネーについては、まだモバイルコマースにおける決済手段として利用されるケースはそれほど多くはないようですが、ダウンロード型のコンテンツの購入に使われるケースがあります。 利用する決済手法に応じて、支払い手数料負担額を決めることになります。

SSL

個人情報を取り扱うことになるためSSL申請を行う必要があります。商品の送付先情報などをSSLで保護することになります。SSLには複数種類がありますが、各キャリアごとの対応状況は下記URLを参照ください。(※2009年4月20日現在)

対応していない証明書を取得し、実装したとしても、画面が正常に遷移しないケースがありますので、構築の際には、対応している証明書を取得するように注意しましょう。
一般に、SSL証明書の取得はECサイト運営企業側で実施してもらう必要があります。手続きには2~3週間を要する場合もあり、急いでサイトを立ち上げる場合には意外に見落とされることもあるため注意しましょう。
カートページや決済ページなどの行動解析を行うことが可能なツールもありますが、注意点として、キャリアの仕様及びセキュリティの観点から、外部ドメインにSSL内のデータを送付しないように注意しましょう。特にビーコン方式を用いたツールの場合、集計サーバが外部ドメインに存在していることがあるので注意が必要となります。

物流・在庫管理

在庫数をどのように管理するのか、在庫そのものをどこで管理するのか、配送をどのように行うのか、をそれぞれ決める必要があります。 在庫数は、特にモール・本店サイトなど複数の店舗運営を行っている場合には管理が複雑になり、店舗間での在庫数の同期の取り方には注意が必要です。 在庫そのものは、商品の性質や規模に左右されますが、社内に在庫を置き梱包・配送処理を自前で実施する場合と、社外の倉庫などに在庫を置き梱包・配送処理は業者に指示をして実施する場合があります。 配送は、選択する物流会社・倉庫会社などにより必要手数料が異なります。送料は顧客が支払うことにするのか、地域・商品の重量や大きさによって異なる配送料金を設定するのか、一定金額以上の購入については送料無料にするのか、などの送料設定を取り決める必要があります。 「購買・行動情報のトラッキングや分析」「マーケティング情報の収集・解析」において、コンバージョン分析結果と、在庫データを連携することで、機会損失を最小限に抑えることが可能となります。ただし、サイト上での売上は購買完了後、メールや電話でのキャンセルや、交換などが発生した際に、アクセス解析データ側の修正が行われるようにするなどの対策を行わないと、実際の売上とは異なる点に注意が必要です。

サイトの制作

モバイルコマースサイトは非常に多岐の要素から成っており、空メール・サイト制作・FLASH・メール配信の各要素も含むことになります。

空メール

空メールについては詳しくは本ガイドライン 第1章 各種サービスの「◆プレアクセス編 ①空メール」をご参照下さい。モバイルコマースサイトにおいて空メールがよく利用されているのは、メルマガ登録時、会員登録時、商品購買時などになります。商品購買時には、ユーザへの連絡手段を確保するという意味で、メールアドレスを取得しておく方が良いでしょう。 またユーザー側の端末の設定で、「指定したドメインのメールのみ受信する」などのメール受信を制限されているケースがあります。空メールに限らず、サイトより本人確認の為「注文確認メール」などを送信する事がありますが、その際には送信するドメインを明記し、ユーザ側での設定を促すような記載をしておくと良いでしょう。

サイト制作

サイト制作については詳しくは本ガイドライン 第1章 各種サービスの「オンアクセス編 ①携帯サイト制作」をご参照下さい。ターゲットとするユーザ層にも依存しますが、一定以上古い端末については対応端末外としているモバイルコマースサイトも多くありますので、どこまで対応範囲とするかはECサイト運営元とよく相談して決めると良いでしょう。大きくは利用可能なHTMLタグ、ページキャッシュ容量、対応画像フォーマットなどに違いがあります。

FLASH

FLASHについては詳しくは本ガイドライン 第1章 各種サービスの「◆オンアクセス編 ④FLASH」をご参照下さい。モバイルコマースサイトにおいてはトップページの上部に使われているのを散見します。

必須記載事項

個人情報保護の観点から、サイト上にプライバシーポリシーの記載が必要となります。また特定商取引法に基づく表示も合わせて必要となります。

参考URL:特定商取引に関する法律(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/policy/economy/consumer/consumer/tokutei/index.html

 昨今の市場環境を考えると個人情報の漏洩はサイト存続にも関わる事態になり得ますので、十分な注意を払った管理体制の構築が望まれます。

購入画面

通常モバイルコマースサイトは
商品説明ページ→(ショッピングカート)→決済ページ
というフローで成立しています。 商品説明ページは通常は画像+商品説明文から成り立っています。画面が小さい分、ユーザに商品の情報を正確に伝えるためには拡大画像を用意するなど、1商品当たり複数の画像を準備することが望ましいでしょう。

ショッピングカートについては商品点数が少ない場合には設けていないサイトもありますが、一般的にはカートのシステムを準備することになります。

決済ページは準備段階で選択した決済手段に応じて制作されることになります。ユーザとの連絡手段を確保する目的で空メールのやり取りを決済ページに用意するケースもあります。購買完了後には購入情報をユーザにメール送信することが望ましいでしょう。また決済ページと購入完了ページの間には必ず購入情報確認ページを表示する必要があります。一般にモバイルユーザは操作性を重視するため、直接購買に関連しない情報の入力は出来るだけ避ける方が高い操作性の実現につながります。決済手法について、携帯サイトに対応しているかどうかは事前の確認を要します。

別途、物流や在庫情報との連動が必要となる場合もあります。

アクセスを携帯電話からのみに制限するために、各キャリアのゲートウェイサーバのIPアドレスからのみのアクセスを許可するという場合もあります。iPhoneやAndroidを始め、スマートフォンなどのフルブラウザ端末からのアクセスは、携帯ブラウザからのアクセスとは異なるキャリアのゲートウェイを経由して来訪するので、注意が必要です。

「購買・行動情報のトラッキングや分析」「マーケティング情報の収集・解析」において、決済ページ、決済完了ページまでは、SSLページとなっており、売上向上に重要なポイントとなります。商品説明ページからショッピングカート、決済ページから決済完了といった一連の行動経路解析を追うことで、離脱ページの把握、コンバージョンに至ったきっかけの把握が重要となります。

管理画面

コマースサイト管理側が利用するための管理画面を必要に応じて制作します。注文処理を行う機能、購買状況や在庫状況の確認が行える機能、購買層の分析が行える機能、在庫の追加発注を行う機能、ユーザサポートを行う機能、など種々の機能があります。管理画面はSSLで保護することが望ましいでしょう。 また昨今、個人情報の漏えいには大きな注意を要します。管理画面へのアクセスは特定IPアドレスからのみに制限したり、ログイン用のID/パスワードは定期的に変更するなど情報保護のポリシーはより厳格にしていく必要性が高まってきています。

PCサイトとの連動

モバイルコマースサイトとPCコマースサイトを併設する場合があります。管理機能を共通化すれば、複数の販売チャネルを持つことができるため、売上を伸ばす機会を増やすことができます。既にPCコマースサイトを保有しているサイトがモバイルコマースサイトを新たに立ち上げる場合には、会員情報や商品情報など共通化するのかどうか、データの同機をどのように実現するのか、などの運営ポリシーを最初に決める必要があります。 「購買・行動情報のトラッキングや分析」「マーケティング情報の収集・解析」を行うにあたって、PCサイトと連動したサイトであれば、PCサイトと携帯サイト双方をシームレスかつできる限り同一の指標をもって解析を行えることも重要となります。また、アクセス解析ツールによって得る必要のある情報をまとめ、それらが満たされるかどうかの確認も必要です。 Webサーバやサービスへのセキュリティリスクや負荷、携帯特有の集中アクセスによる解析コスト、解析用サーバの維持管理費用など、トータルコストと、収益のバランスを見極めることも重要です。

運用について

コマースサイト立ち上げ後には、ユーザサポートを中心とした運用業務及び日々のコンテンツ更新業務やメールマガジン発行業務が発生します。問い合わせ窓口の設置、キャンセル・返品の受付ポリシーの設定、配送状況の提示の有無などが検討事項となります。

問い合わせ窓口

ユーザからの問い合わせ方法はメールと電話があります。フリーダイヤルを設置することはユーザフレンドリーと言えますが、携帯電話からも利用可能にしておく必要があります。また、電話での受付時間が24時間にできない場合には合わせてメールでの問い合わせ窓口を設ける必要があります。 実体としてはメールからの問合せが主となりますのでそれに対応できる運用体制を敷いておくことが必要となります。この場合も迅速な対応が望まれますが、サイト中には問合せへの対応時間や返答時間の目安を記載しておくと良いでしょう。

キャンセル・返品について

配送前のキャンセルや配送後の返品受付に関するポリシーを取り決め、サイト上に明記しておく必要があります。

コンテンツ更新について

商品情報の追加・削除やお知らせ・キャンペーンなどの情報提供を行います。モバイルは特に頻繁なコンテンツ更新が望まれます。

メールマガジン発行について

メール配信については詳しくは本ガイドライン 第1章 各種サービスの「◆ポストアクセス編 ①メール配信」をご参照下さい。携帯サイトへのアクセスはメール経由が比較的多いため、定期的なメールマガジンの発行を行うECサイトが多くあります。EC以外でのサイトでのメールマガジン配信と同じく、深夜時間帯の配信は行わないように留意しましょう。 特にエラーメールの処理には気をつけましょう。エラーメールを定期的にアドレスリストから削除すること(アドレスクリーニングと呼びます)が必要になります。これを怠ると、キャリアから配信制限をされることがあります。削除については、一度エラーメールが返ってくれば配信対象から外すという処理をするのが良いでしょう。コマースサイトでは空メールを購入や会員登録時に用いていることも多く、配信制限をされたときの被害が大きくなる場合があるので注意が必要です。 モバイルコマースにおけるメールマガジンの中には、表現が過激に過ぎるケースが散見されます。誇大な表現はユーザを混乱させたり、信頼を失わせる元となります。市場全体の健全化のためにも適切な表現でのメールマガジン配信を心がけましょう。

アクセス解析について

携帯サイトのアクセス解析は、通常のWebサーバのログ解析だけでは十分な内容を取得することが出来ません。アクセス元のIPアドレスはキャリアのゲートウェイサーバに限定されるので、IPアドレスを基にしたユニークユーザのカウントを行うことが出来ません。そのため、ユニークユーザ数の解析やアクセス経路分析などを行うためには別途専用のシステムを用意する必要があります。

集客について

モバイルコマースサイトにおいては、メールマガジン配信による売上向上施策が多く取られる性質上、集客時にもメールアドレスを獲得することを目的とした広告出稿を行うことがあります。他社媒体に広告出稿を行ってメールアドレスを獲得した場合には、迷惑メールとならないよう獲得時にユーザ側から承諾を得ている必要があります。 また獲得後、実際の配信までの間がある程度以上空いてしまうとメールアドレス変更などによるエラーメールが増えてしまいますので、一度アドレスクリーニングを実施することが望ましいです。目安としては2週間以上とお考え下さい。

測定におけるポイント

購買完了という明確なコンバージョンポイントや、会員性のサイトであれば、会員獲得におけるコンバージョンポイントが明確である。 但し、コンバージョンポイントのみの効果測定ではなく、会員、非会員の行動傾向の差異や、カートページから決済完了までの非SSLページからSSLページまで一貫した行動経路の解析、メールマガジンや、外部広告からの流入とコンバージョン解析が必要です。 また、これらの解析データと、顧客情報を紐付けることで、顧客価値の向上とサイト価値の向上を図ることが可能となります。

主な効果測定項目

  • 端末機能情報
  • セッション数
    入口ページに流入した数を判定
  • ユニーク数
    同一来訪者(来訪端末)を判定
  • 入口ページ
    パラメータ付きの流入ページにて、空メールやQRを含む外部広告からの流入を判定
  • イベント
    インプレッション(閲覧)、流入開始から終了まで
  • クリック数
  • クリック率(クリックスルーレート)
  • 新規訪問者数
  • 再訪問者数
  • 直帰数
  • 直帰率
  • 1セッション当たりのページビュー数
  • コンバージョン数
  • コンバージョン率
  • 行動経路解析

【出典・引用】
モバイル マーケティング ソリューションガイドライン Ver.2.2|モバイル マーケティング ソリューション協議会 発行

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