月刊「アイ・エム・プレス」2008.12
ネットマーケティング関連誌である「i.m.press」の2008年12月号の「お客様との関係づくり支援市場」特集として、アクセス解析ツールが取り上げられていた。
アクセス解析ツールの実施をサポートするソリューションとして、自社サイトの評価、改善、検証のための基本手段がWeb解析であり、
「アクセス解析は、必要な情報を蓄積し、解析・加工、レポートにまとめるという手順で行われるものであり、アクセス解析ツールはその実施をサポートするソリューションであると定義される。」
として、ツールの特性から市場規模、市場特性から、クライアント動向、市場動向、課題と展望と4ページにわたり紹介されていた。
高いメリットで主流となっているタグ型??
GAなどPCサイト無料解析ツールや、myRTモバイルなどのケータイサイト無料解析ツールの出現により、無料で手軽にWeb解析を行うことができるようになったことで、確かにマーケットに広く採用された点では、タグ型が主流と言っても過言では無いと思うが、解析手法、取得データ、運用・解析リソースという点と、何よりセキュリティ的なリスクを考慮すれば、決してパケットキャプチャや生ログなどのタグ以外の方式で取得できない情報が収集できるメリットがあるとは言えないと感じている。記事では、
「あらかじめ必要なデータを定義しておき、そのデータが取得できるように各HTMLにJavaScriptのタグを埋め込み、サーバにデータ送信される仕組みが生まれた。」
という説明が、パケットキャプチャやログでは取得したデータを蓄積後に加工、レポートを行うため、分析に必要なデータがそろわない恐れや、加工に時間がかかる恐れがあるというパケットキャプチャとログ方式の説明の後に付記されている事に若干違和感を感じた。
タグ型で耳にする意見としては、そもそも解析対象ページ全てにタグを貼らなければならないこと、「必要なデータの定義」という「必要なデータ」が何かといったKPI指標に繋がる部分についてはデータの取得法に依存するデメリットでは無く、そもそも解析対象サイトのコンセプトと企業のKPIの課題であり、
むしろ「必要なデータの定義」が決まってからがタグ型は非常にリソースに大きなコストが生じるという。
なぜかというと、同一のタグを全ページに貼り付ける事で基本的な解析はできるものの、ウェブKPI指標が決まった後に「必要なデータの定義」付を行うとなると、各ページに異なるタグを付けざるを負えないというのが現状だからなのだという。
もちろん、ウェブKPI指標決めから設定まで一元的にコンサルティングを行ってもらうことはできるのだが、パケットキャプチャ型やログ型は定義さえ決まってしまえば設定はツールのみで即時完了し、当日から解析ができるツールもあるものの、
タグ型は一元的なコンサルティングの後に、運用中のサービスサイトに対してタグを個別に埋め込んでいく手間が生じるのである。
ここまでやってデータが取れた後、データからウェブKPI、コンセプトとのズレや、新たなウェブ戦略が見えてくるのだが、マーケティングスパイラルを繰り返すたびに、再度サービス運用中のサイトにページ毎にタグを貼りなおしていく必要があるという。
個人的には、タグで収集できるデータにはパケットキャプチャやログに比べて少ないと思っている。これは、技術的な特性上の話になってしまうが、タグは読み込まれないとアクセスデータとして蓄積されない。
つまり、ブラウザにタグが読み込まれなければデータは取得できないのである。
404エラーや、外部へのセッションをセキュリティソフトなどで制限しているなどの場合は集計されない。
また、購買完了ページや、申込完了ページといったROIに重要なコンバージョンページといった、顧客のカード情報や個人情報を、外部の集計サーバへインターネット越しに渡していることとなるため、セキュリティリスクが高い。
WebページはSSLなどでセキュリティがかかっていて、入力した情報はセキュアにサーバに送信されているが、タグによって全く異なるドメインに情報が飛んでいる形になる。
銀行、金融系ではセキュリティポリシー上外部へデータが出るツールを採用することは無いと言える。またDoCoMoなどの公式サイトではキャリアで制限事項としてHTTPSページでの他ドメインへのリンクを禁じているため、安心して良いと言えるが、
私がコンサルティングを行ってきたサイトで何度かSSLページに外部集計サーバへのタグが貼られているケースを見たことがある。
もちろん外部サーバへデータを送る際にもSSLがかかっていればまだ良いのだが、それでもセキュリティリスクの観点からはお勧めすることはできない。
タグ型は、まず基本的な解析を行うに当たり現状を低い導入コストで把握し、その上でウェブKPIを探り運用リソースコストを算出した上で上位製品を検討するための足掛かりだと思っている。
決してタグ型はデメリットが多く、良くないわけではない。
GAにはPV数での解析上限があり、タグ手法の有料ツールはPV毎の課金となるため、サイトが成長するにつれ手間とコストが莫大に膨れ上がり、解析ツールへの損失、解析へのリソースとサービスサイトでのレベニューバランスが崩れるなど、売上向上という本質的な目標に対するリスクの可能性があるので、優良製品への乗り換えの際にはこれらのポイントをじっくりと検討した方が良いだろう。
2004年から本格化した発展途上のアクセス解析市場
筆者がアクセス解析ツールを本格的に使用し始めたのは、アバターサイトが出始めた2002年だ。当時はwebalizerをサーバに組み込み、Webアクセス解析データをマーケティングに活用していたが、戦略的なマーケティングによる集客アップ、売上を伸ばせば伸ばすほどデータ容量の肥大化、集計の遅延が発生し、1時期タグ型タイプに切り替えたものの、一度火が付いたサイトのPV増加、顧客行動傾向の分散パターンの増大に対して、ただ単に月のレベニューが解析ツール代に消えていくだけで、戦略的な解析を行い、的確なマーケティング活動などしているだけのスピードをタグ解析ツールで得ることはできなかった。
パケットキャプチャという選択肢もあったが、既にタグ解析ツールに莫大な費用をかけてしまっていながら、解析ツール自体のROIが非常に悪く、そのコストを広告にかけることが売上に繋がる状況となってしまったために、ツールをそこで手放してしまった。
Web解析とマーケティングからウェブKPI指標を策定し、戦略的なサービス提供を維持できなくなったこともあり、筆者は転職することとなるのだが、
結局そのサイトは顧客行動、属性などを含めてサイト価値、Web戦略に必要なデータを失ってしまったため、ウェブKPI立案を生ログからの分析に頼らざるを負えない選択をした経営陣は、その後500万人を集めたサービスを手放す選択肢しか残らなかったという。
本格的にアクセス解析ツールに携わったのは、その後の2004年からなので、下の図のスタート時期とかぶる。
個人的な実感として、2004年からの流れを肌で感じていたので、あながち間違いでは無いだろう。実数は何とも言えないが・・・
【引用】
月刊「アイ・エム・プレス」2008年11月25日発行号
発行:㈱アイ・エム・プレス
㈱アイ・エム・プレス独自調査
筆者の見解では、
2004年から2005年にかけての増加は、ブロードバンド化による大手サイトのトラフィック増加により、生ログからの集計などの負荷の高まりと、Webマーケティングの浸透によるものだと見ている。
2005年から2006年には、大手サイトに追随する形でリッチコンテンツの増加、Eコマースサイトの増加により、Webマーケティングに手を出しやすくなったことが市場規模を後押ししたと考えられる。
2006年から2007年にかけては、PCサイトに加えてモバイルサイトが徐々に増えてきたこと、携帯がパケット定額になるなどでケータイサイトの分析の需要増加などが後押しをしたと考えられる。
2007年から2008年にかけては、モール型のコマースサイト、格安ソリューションによるPCサイトやケータイサイトの増加、BtoBサイトがWebに目を向け始めたことなどが後押しをしたのではないだろうか。
2007年から2008年にかけては、テレビなどでの映像、ショッピング番組などがWebに力を入れ始める件や、学習塾、リアル店舗がモバイルの特性を生かした戦略を取り始めるなど、Web以外のマーケットを対象としていた企業がWebに移ってきたことで、Web解析のニーズが高まっと言える。
2008年以降も不況ではあるものの、既にアクセス解析を行っている企業が顧客属性を的確に捉えることでレベニューに繋げWeb価値を高め、それについづいする形で市場分析、顧客分析のデータをWebから収集していこうという企業は増えてくるのではないかと思う。
指摘されるWebアナリストの不在
本誌の特集では締めとして、米国ではWebアナリストといった職種が一般化しているものの、日本ではWebアナリストが確立化されていないため、解析結果を有効な改善に繋げられていないケースが少なからず見受けられるという。個人的には少なからずなのだろうかと疑問には思うが・・・
トレーニングやコンサルティングがあれば有効な改善に繋がると信じるよりは、
解析対象サイトの5W1Hとコンセプトを改めて書き出し、解析対象サイトの目的と現状のコンテンツ内容にずれが無いのかを確認した上で、
的確なコンバージョンポイントを探った上で、自分達の判断がマーケットにとって適切であったのか、自分達が選択した指標・定義が間違ってはいなかったのかについて、仮説検証を繰り返すと、
自然に専門家に何をどのように相談したら良いのかが見えてくるだろう。
そうすることで、よりスムーズなマーケティング戦略の立案からレベニューの向上までスパイラルアップをしていくことができるだろう。
私自身の経験で言うと、突然「なんとかしてくれ」と振られた上でサイト価値を上げていくことよりも、「解析結果からここをこうして、こういった戦略を取ったのだが、この時はこのような結果で、この時はこのような結果となってしまっていて、自分達の指標・定義付に自身が無くなっている」といった相談からのスタートの方が、レベニューに繋げるスピードが高い。
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